「発足に際して」 (公財)結核予防会 結核研究所抗酸菌リファレンス部 副部長 御手洗 聡 理事

 今、樋口先生から劇的なお話を伺いました。ちょうど同じ頃、私はJAICAの専門家でアフリカのザンビアに派遣され、国で一番大きな病院で当時結核の検査施設がありませんでしたので、その結核検査室の立ち上げをしてきました。

 途上国で、ザンビアはサウスアフリカの典型的なHIVの蔓延地域であり、1980年代終わりごろには結核の罹患率としては低下してきていたのですが、HIVのパンデミックを受けて結核の罹患率は、その当時400くらいが今は600程度にあがっている国です。チェストクリニック、胸部疾患外来には連日人があふれている状態でした。私も検体の検査などをやっていたのですが、どうみても感度が低い。

 患者さんは日本では考えられないほど生活が貧しく、病院に一回来るのが精一杯、という状態です。日本のように何回も検体を出すことや、吸入する、といった機械も使うこともできないし、一日100人もの患者さんがくれば、そんなことはできません。なんとか、診断の質を上げなければならない。

 そこでWHOのガイドラインに排痰指導があるので、実際やってみたら、かなり劇的な効果があり、喀痰の質の向上というものの重要性をあらためて認識し、強調してきました。ザンビア唯一の国立病院での研究データを簡単にご説明します。(スライド使用:通常では15%程度だった陽性率が排痰指導をした群では50%以上に。実に35%もの陽性患者が見逃されていた可能性がある)こういった背景がありました。

 昨年樋口先生の講習会の講師で呼ばれていったときに見せていただいて、これだ、と思ったのは、途上国などで使いたいという発想がまずありました。、排痰指導は、手間もかからず元手もいらない。ラングフルートは器具のお金はかかるとしても、電気が要らない、などといったことを考えると将来的には有用と考え、研究会の発足に参加しました。当会の活動を通じて、良質の喀痰の採取の重要性を伝え、今後の結核診断の質の向上のため、普及啓発に力を注いでいきたいと思います。

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