「発足に際して」 京都大学附属病院検査部 細菌検査室 樋口武史 理事

 関西は新型インフルエンザの大流行で、昨日パンデミックということになりましたが、体調を崩して大混乱の1ヶ月でした。この研究会の発足にあたって、個人的にも非常にうれしく、期待もしております。この研究会でどんどん各方面の臨床的なデータが出て一日も早く一般診療、臨床に応用されるようになり、我々の検査としての診断技術の向上を切に願っているものです。

 これまで、私は20年少し臨床検査技師として、主に精密検査、特に結核検査を中心に従事してまいりました。ご承知のようにここ数年の抗酸菌検査の迅速検査の寄与はめざましいものがあります。しかし、現場で実際この迅速検査の有用性がどこまで性能を発揮できているのか、というと個人的には、半分もしくはそれ以下の性能しか発揮していないのではないか、と思っています。喀痰の質というものが非常に重要で、これが迅速診断の結果を左右することは言うまでもありません。

 エピソードをご紹介いたしますと、私は京大の前に、結核予防会大阪病院に勤務して抗酸菌の検査をしておりました。たまたま、抗酸菌の塗沫検査の至急検査の依頼がありました。見てみますと唾液で検体の再提出をお願いしたのですが、やはり唾液様で検査が無駄になるので、内科外来の担当医に連絡しました。ところが、すぐに内科外来から電話があり、患者さんが激怒している、説明に来い、とのこと。行って話しを伺うと、こんなに一生懸命痰を出しているのに、検査できないとはなにごとだ、唾液だというのなら、痰を出す方法を教えてくれ、とのこと。担当医、ナース、私も顔を見合わせて、患者さんを納得させる回答ができなかったのです。

 そこではたと気づいて、我々医療従事者が患者さんに正しいサンプリングの方法を指導できなければ患者さんが正しい喀痰を出せるわけがない、といろいろ試行錯誤、思案しているときに、ICTの活動で立ち寄った病棟で、理学療法士が排痰をうながしていたのを見て、これだ、と思いました。

 早速チーム医療ということで、リハビリの先生方も含めて、採痰指導チームを作り、早期発見に重きをおいて、外来で抗酸菌検査の排痰に困っている患者さんに指導に行くようになりました。パンフレットを見ていただくとわかるように、指導を受けてからの検査結果での抗酸菌検査陽性が増えて、診断治療により、基本的には呼吸のケアということがベースになって、患者さん自身呼吸も楽になり、QOLもあがり、それによって続ける、そのために呼吸器の状態も良くなる、という一石二鳥ののような副産物も得られた、ということがありました。ただし、これも数少ないマンパワーでやっていますので、患者さんが集中しますと順番待ちになるというデメリットがあります。

 当初からこういったデバイスを待ち望んでおりましたので、この研究会が立ち上がったということで、私達現場の技師としてはこの研究会を通して、国内の有用なデータをどんどん出していただいて、さらに臨床検査の診断技術の向上をめざすということを切に願っております。

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